HEROに花束を(完)
たくさんの病人が並んで座っていた白い待合室の椅子。
天井の窓から差し込む光。
鼻の奥に残る消毒の匂い。
液体の入った点滴の袋。
そんな光景の中に、悠の青白い顔がパッと見えたような気がした。
「悠ちゃんはお母さんと一緒だった。すごい優しそうな人だったよ。」
お姉ちゃんは中々本題に入らない。
…入らないでほしい。
「そしたらね、一人のお医者さんが悠ちゃんたちに親しそうに話しかけてきたの。もう、ずっと前から知り合いだったって感じの雰囲気だった。」
すうっと胸の奥が冷たくなったのがわかった。
「通院しているみたいだった。」
通院…。
「それで…たまたま聞こえちゃったんだ。病名…っ。」