HEROに花束を(完)

それは君だから


消しゴムのカスを集めながら、わたしはみんながガヤガヤと帰り支度をしているのをぼんやりと感じていた。


大半の人は消しゴムのカスなんて捨てないけれど、わたしは神経質なのか全部捨てないと気が落ち着かなかった。


そんな時、

放課後、教科書をカバンにしまっていると、

悠の大きな声が教室に響き渡った。


「クラスの親睦を深めるってことでさ、みんなでカラオケ行こうぜ!」


「ああ!いいね!楽しそうだし!」


「行こ行こ!」


「全員強制参加な!」


「おー!」


わたしは不安な気持ちを抑えるように愛用しているノートを腕に抱いた。


こういう時、いつも自分が消えればいいって思った。

普段は気にしていないのに、たまに、突然、自分はここにいてはいけないのではないかと思ってしまうことがある。

今も、不意にその気持ちが襲ってきた。

グループ決めをするときの不安と同じ種類の気持ち。

わたしと同じグループになったら周りのみんなに申し訳なくて、どうしてわたしがここにいるのかわからなくなる。



どうしよう…

どうしよう…



みんなが教室を出てから帰ろう。


なるべく目立たないように…

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