HEROに花束を(完)
*
「わあ、どこ座るー?」
「うちここー!隣来てー!」
「俺歌いたい曲あるんだけどー!」
「ちょっと待てって、俺が先だっつーの。」
がやがやとカラオケBOXにみんなが入っていく中、わたしはじっとうつむいてドアの前に立っていた。
どうしよう…本当に来ちゃった。
怖くて足がすくんで前に進めない。
カラオケなんて、お姉ちゃんとしか来たことないのに…
どうしてわたし、きちゃったんだろう…
「お、どした?」
するとわたしの前を歩いていたはずの悠が隣にいて、わたしの顔を覗き込んできた。
「や、やっぱりわたし帰る。」
そう言って背を向けようとしたものの、案外強く悠に腕を掴まれたからわたしの行動は阻止された。