HEROに花束を(完)
「マジでなんなの?彼女のこと、そんなに好きなわけ?」
「興味本位でさわんな。」
「はあ?いっつもねちねち書いてるから気になっただけじゃん!」
「んだよそれ。あいつの何がそんなに気に入らねえんだよ。」
カップルの揉め事のような会話が耳に流れ込んでくる。
なぜだか胸の奥がちくっとしたけど、その理由はわからなかった。
「うざいの!!」
「声がでけえよ。」
悠の一言で二人の音量が小さくなり、なかなか聞き取れなくなった。
「…いっつも…悠と…地味子…なのに。」
「はあ?…ざけんじゃ…。」
「好き。」
「…え?」
「あんな子よりわたしの方が…いい。」
「…ごめん…。」
わたしは、なぜだか二人の小さな会話を聞きながら、桜の木の下で笑いかけてくれた、悠の瞳に映り込む自分の姿を思い浮かべた。
わたししか映っていない悠の瞳を…