HEROに花束を(完)


「もし…かして。」

「ん?」

「悠…あの時…女の子と揉めてた時…」

「え?」

「去年の夏…わたしのことをよく思ってなかった子がノートを見ようとしたのを…防いでくれてたの?」


思い切って聞いたわたしの心臓がばくばくと音を高鳴らせる。

なんて自意識過剰な自分なんだ。

なんて生意気ななんだ。

そう思っているのに、聞いてしまったことは取り返せない。


「お前、聞いてたんだ。」

怖くて顔を上げられない。

「どこまで聞いてた?」

そこで言葉に詰まる。


確かあれは…



悠が告白されてた時。



聞いてないって、初めて悠に嘘ついた。今ならわかる。それは悠が好きだったからで…その女の子が告白するのを見て、ヤキモチを焼いている自分がいたんだ。

わたし、悠に出会ってからどんどん欲張りになってるよ。


「……悠が、ごめん…って…」

「………マジ?」

「ごめん…嘘ついて。わたし…ヤキモチ焼いてた。その子に。」


思い切って言う。わたしって、今日、すごい嫉妬深い女だな…嫌われるかな。嫌われるよね、こんな面倒くさい人はいやだって。ただでさえ、わたしの勝手な片想いなのに…ごめんね。


「っ……んだよそれ、……素直すぎる、今日の穂花。」

「ごめん。」

「いや、怒ってねえよ…つか、まあ…うん、まあ、なんつーか、あのノート、お前にとって大切なものなんじゃねえかって思って…さ。」


体温がぐんぐんと急上昇する。

やばい…恥ずかしい。

でもそれよりも…嬉しい気持ちの方が、今は大きい。本当に自分勝手だけど、勝手にその子に対抗心を燃やしていたから…すごい…嬉しい…


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