HEROに花束を(完)
悠といると、なぜだか心も体も休まる。悠に対しての重い不安は山々だし、将来のことを考えると涙が止まらなくなる…けど!だけど、どうしても悠のそばにいたい。
「うん、まあ…そんな感じ。」
悠は照れているのかそっぽを向く。
そして悠の緊張がわたしを余計にドキドキさせて、なんだかまた気まずい空気が生まれる。
だけどその気まずささえ愛おしいと思ってしまうわたしは、本当に重症のほかなんでもない。
「えっと、うん。あの…ありがとう。」
悠の目を見ないで白いシーツを見つめながらそういえば、
「ああ…おう。」
ってそっけない返事が返ってくる。
ちらっと顔を上げれば、悠のシュッとした鼻筋の奥に光る、キラキラしてる二つの瞳と一瞬だけ視線が交わって、そっと自然に逸らされる。
いっそお互いの視線がピンと張った糸で繋がってしまえばいいのに。
そしたら永遠に君と見つめ合っていられるんだ。
どんな時も、これからも…ずっと、ずーーっと、わたしを見守っててよ。
悠の綺麗なビー玉みたいな目を見るたびにそう思う。
「悠。」
「ん?」
悠が振り向き、傾き始めた日差しで薄茶色に優しく灯る瞳がわたしを見つめると、少しだけ細められる。
まるで…愛おしいものを見るかのようなその優しい表情に、好きって気持ちが溢れて止まらない。
悠のその温かくて、芯の強い二つの綺麗な瞳だけは、ずっと、ずっと輝き続けていてほしいな…
「うーん…なんでもないや、やっぱ。」
「ははっ、なんだよそれ。」
バーカって顔をして、悠はわたしの頭を軽く叩く。
一瞬だけ触れた額が熱を持って、身体中が喜びで満ち溢れる。
好きな人と結婚するって、本当に奇跡的な事なんだなって、どうしてか今思った。
大好きで大好きで止まない誰かと共に毎日を過ごして、側にずっといられるなんて、本当に幸せなことだから。
お父さんもお母さんも、きっと二人が出会えたことは奇跡で、わたしが生まれたこともきっともっと大きな奇跡。そして、お父さんがお義母さんに一瞬でも恋をしたことが、もっともっともっと大きな奇跡で。
そんな奇跡の重なりがあったからこそ、今のわたしがいる。
だからこの瞬間も…きっと、素晴らしい奇跡の一部なんだろう。