HEROに花束を(完)
「今日は…どうしたの?」
わたしの声が震える。
真夜中の一時。
とっくに面接時間が終わっている中、死んだ魚のような目をした病人が夜の屋上に立っている、その生々しい光景がまざまざと目の奥に浮かんだ。
悠はきっと、病んでいる。
精神的に、限界なんだ。
「悠…ねえ、悠。頑張ったね。」
そんな言葉しかかけられない自分がいやでいやでたまらない。
「悠…ありがとう、大変だよね。ごめんね。」
何かもっと言えないのだろうか。
わたしは悠の肩を掴んでぐっと近づく。
「頑張ったよね…頑張ったよね…悠は、頑張ってるんだもんね…」
涙は見せまい。
「誰よりも頑張ってる…。」
いつの日か、チカチカと楽しそうに明るく輝く瞳から、神様は残酷にも光さえもを奪い取る。
もともと失明宣告されていた悠。
それだけでも大変だったはずなのに、悠は命の終わりを告げられた。
あと一年とちょっと。
それまでに自分のしたいことすべてをしろなんて、ひどい、ひどい、本当にひどい話だ。
そんなの無理に決まってる。
だけどそれを受け入れるしか悠には方法がなくて。
悩んでいる間にも刻一刻と悠に残された時間は進んで行く。
だから、笑ってごまかすことしかできなかったんだ、きっと。