HEROに花束を(完)

「誰見てるの?」

千秋ちゃんが囁いてくる。

「べ、別に。誰も。」

そう答えれば怪しそうな視線を送ってくる。

「ふーん。」

そして千秋ちゃんが反対側を向いた隙をついて、悠を目で追う。

今までちゃんと見てこなかったけれど、最近気づいたのは、悠が意外にも運動神経が良いということ。


心の中でうるさい猫背のねずみ男なんて呼んでいるけれど、

案外運動もできて頭も良いということを発見してしまったのだ。


そしてそれに気づいてしまったからには、興味を持たずにはいられない。

バシッ!

コートに大きな乾いた音が響く。

悠がバレーボールを相手陣地に叩き落とした音だ。
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