HEROに花束を(完)
「へ?って何よ!へ?って!」
「え?」
なおもわたしが首をかしげると、
「だから誰なのよあんたの好きな奴は!」
と叫んで、もともとまんまるい目をもっと見開いて迫り寄ってくる千秋ちゃんは怪獣そのものだ。
みんな見てるじゃん!
もお、千秋ちゃんってばー!!!
わたしが立ち上がって逃げるようにコートに急ぐと、
千秋ちゃんはコラア!って怒声を出しながら追いかけてきた。
「好きなやつ教えろお!」
やばい!捕まる!
そう思った瞬間、
「わっ、」
誰かに思いっきり衝突した。どこか爽やかな香りが鼻を掠める。
「ごめんなさ…あ。」
顔を上げてつかの間思考停止する。
だって…
「穂花、お前、」
悠が何か言おうとした時、迫り来る千秋ちゃんに捕獲された。
「好きなやつ誰!」
「ちょ、声大きいよ!」
わたしは慌てて千秋ちゃんを引きずる。
「ごめんね、悠!」
「え、ちょ、」
「バイバイ!」
強引に悠から離れて千秋ちゃん相手にむうっとする。
「ごめんごめんって。」
そう言って謝る千秋ちゃん。絶対反省してないな、これは。
わたしが口を開きかけた時に、今度は体育の先生に捕まってしまったのでした…。