HEROに花束を(完)
「そっか。」
安堵の表情を見せる悠。だけどそれも束の間で、すぐに不機嫌そうな表情になった。悠がイライラしてる顔を見たことがなかったから、思わず目を見張ってしまった。
「…お前さ、」
「うん?」
「…好きなやついんのかよ。」
あれ…?
ちょっと何を言ってるのか、
「千秋が散々騒いでただろ。お前が惚れてるやついるってさ。」
「えっ、いやいない!いない!」
なぜだか必死になって誤解を解いている自分がいた。悠だけには勘違いをされたくないって思ったんだ。
「いや、でも、」
「あれは勝手に千秋ちゃんが言ってただけだよ?」
「マジで?」
コクっと頷けば、はあー、とため息を漏らす悠。
「千秋のやつ、うぜえ。」
まさか悠から他人への愚痴が出てくるとは思ってなかったから、少しだけビックリする。
「まあーでもよかったわ。」
そう言ってすっきりした〜なんて言いながら歩き出す悠。
「腹減ったわ。」
「え…。」
さっきの不機嫌さはどこへ行ったのさ…。
相変わらず気ままな悠に、少しだけ笑ってしまいそうになった。
告白された後には、見えなかった。
でも…これだけケロってしてるってことは…
慣れてるってことなのかな。
胸がちくちく痛い。
「ほら、授業遅れるぞー。」
振り返る悠に小走りで追いつく。
この痛みの原因は、まだ、わからない。