HEROに花束を(完)
ーピッ
駅の改札で同時に音がなる。
普段なら気にしないこの行動も、悠と一緒にしていると思うとなんだか楽しい。
「あっ、今ならまだ間に合う!」
「えっ?」
「ほら、走るぞー!」
そんな悠の声とともに腕を掴まれて、引きずられるように走り出す。
「ちょっと、悠!!」
「いえーい!行くぞー!!」
わたしの腕を掴んで走る悠は、すごく、すごく生き生きとしていた。
走るたびに揺れる小枝色の髪とか、
片手で肩にひっかけている、今にも落ちそうなスクールバッグとか、
意外と筋肉のついた、袖から伸びる日焼けした腕とか、
それ全部が悠で、悠らしくて。
「ああ!発車しちゃう!もっと速く走るぞー!!」