千年前の君を想ふ
しかしまぁ、牛はやはり歩くのが遅いので、私と義政さんの間に沈黙が続く。
風になびいて、カーテン…じゃなかった、簾(すだれ)みたいなのが、ふわり、と浮く。
(うわ…)
簾の隙間から見える大きな満月に見とれる。
「今宵は誠に、良い月じゃな。」
私が月を見ているのに気づいたのか、話しを切り出す。
「…えぇ、本当に…」
「…そうだ、御殿や私の周りの者のことを話しておかねばな。」
そう言って、長々と語り出したのでまとめると…
〇母は義政さんが幼い頃に病死。
〇父は病に倒れており、さっき神社に行ったのは、祈祷するため。
〇同父母の弟がいるが、反抗期。
〇義政さんには婚約者がいて、来月から同居する予定である。
この箇条書きで挙げたことを話しているうちに、御殿に着いたようだ。
「さぁ、どうぞ。」
乗った時と同じように、手を差し伸べてくれる。
「ありがとうございます。」
御殿を前にして、思う。
(うちよりも大きいな…)