千年前の君を想ふ
敦政に連れられてやって来たのは南庭だった。周りの木々や、池の水面は夕日でオレンジ色に染まっている。
(もう夕方だったんだ…部屋にずっと居たから気づかなかった。)
「あれに登るぞ。」
そういって敦政が指したのは、ひときわ背の高い木だ。
……え、今「登る」って言った…?
池にかかっている橋を渡り、中島へ足を踏み入れると、池に鯉が数匹泳いでいるのが見えた。
「あ、鯉だ…」
「早うせんか!」
「すみません…」
イマイチ彼の怒りポイントがわからない。なんでそんなに怒るのかな…?
敦政に急かされて木の下に行くと、ひょいっと私を担いだ。
「うへぇっ!?」
驚き過ぎて変な声が出てしまった。
「私にしっかり掴まっておれ。」
「は、はいっ…!」
敦政は、私を担いでいるのにもかかわらず、軽く木を登っていく。
(ど、どこまで登るんだろう…)