千年前の君を想ふ
彼女を担いで、気に入りのいつもの木に登る。
……我ながら、けっこう強引に連れてきてしまったという感じがする。
「う、わぁ………綺麗…」
彼女の言葉を聞いて、ホッとした。
表情は明るく、目は輝いている。
連れてきて良かった、と思った。
辺り一帯を橙色に染めていく夕日は、彼女の目を、頬を、髪をも染め上げている。
思わず彼女に見とれていると、彼女はふと口を開いた。
「もしかして、あんなに急いでいたのって、私にこの景色を見せたかったから…ですか?」
……そんなこと、分かったとしても言うべきではないだろう。
「お主が知るべきことではない。」
私はまた、天邪鬼なことを口にしてしまう。
すると、彼女はクスッと笑って言った。
「それでも……、連れてきてくださってありがとうございます。」
まさか微笑みながらお礼を言われるとは思わなかったので、驚いてしまった。
そして、思ってしまったのだ。
『もっと深い関わりを』と。