千年前の君を想ふ
ふくに協力してもらいながら何とか歌を仕上げることができた。
頬染まる
君の腕(かいな)で
照らされて
月遠けれど
傍(そば)にとぞ思ふ
【意味(本人は分かっていない)】
夕日を見ているからか、あなたに抱かれているからか、私の頬は赤くなっています。私のことを月のように遠いと思っているようですが、私はあなたのお側に居たいと思っています。
「素晴らしい歌ですね!さっそく敦政様にお届けいたしましょうか?」
歌の最終確認をした後にふくが提案した。
(せっかく作ったんだし、すぐ見てもらいたいな…)
ということで、ふくに頼んで、すぐに敦政に歌を届けてもらった。
30分くらい経った頃に、ふくが夕餉を持って帰ってきた。
「あ、その……敦政は、どうでした?」
ふくは私のぎこちない問いに微笑み、夕餉を私の前に置いて答えた。
「ふふっ…敦政様は、とても嬉しそうでございましたよ。私はこのお屋敷で使用人をして随分経ちますが、あのようなお顔は…」
ふくは何故かとても嬉しそうにしている。
「そ、そんなに嬉しそうだったの?」
「ええ、それはもう。」
(なんでふくは自分のことのように喜んでるんだろう…?)
「あの、なんでふくはそんなに喜んでいるのですか?」
この質問をすると、ふくは表情を陰らせた。
「それは……いち使用人の私からはお話しできません。もしお知りになりたければ、敦政様に直接伺ってみられてはどうでしょうか?」
私のどんな質問でもにこやかに答えてくれていた彼女がこんな風に言うのなら、きっとどんなに押しても教えてくれないだろう。
「わかりました。ありがとうございます。」
ほんとに、どんな顔してたんだろう…