千年前の君を想ふ


ある日の放課後。
帰りのバスに揺られながらスマホを開くと、母からの連絡が来ていた。



『今日は教室で十二単着るから、出来るだけダッシュで帰宅せよ!!』



(ええー…また?ほんと、私に和服が似合うからってこき使い過ぎでしょ……。この前は袴だったし…)



実は私の実家は由緒正しい日本舞踊の家で、衣装の和服が沢山あるから、着付け教室も開いているのだ。



講師である母が着ながら教えるよりも、私に着せつけるのが早いと考えたのであろう。


母曰く「あんたは肌白いし、ふっくらしてるし、髪も黒くて長いから着物が似合うのよー!」と。



私が和服を着るのは嫌いではないのもあって、一度頼まれてからずっと引き受けているのだ。

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