千年前の君を想ふ


それでは、ごゆっくり……



そう言って、ふくはスッと下がってしまった。



(ここまで来たら、行くしかないか…)



「あ、敦政?まだ起きてる?」





中から物音がするのに、返事がない。


「は、入るよ…?」







御簾をそっとめくると、敦政が懐刀のようなものを抜いて、刃先を自身の方に向けていた。





「ちょっと!何してるの!?」


驚きのあまり大声を出すと、敦政はびくっとこちらを見た


ーーが、刀をぎゅっと握り、自分の腹へ突き刺そうとした。


「だめーーーーーーー!!」



必死になって刀を止め、敦政から奪おうともがく。


「輝夜、止めるな!私はもう…生きる意味を見失った。」


「意味ならある!」


「は…?」









「私を愛して!!!」





その瞬間、敦政の手から力が抜けた。


刀が手から滑り落ち、カランと音をたてた。

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