千年前の君を想ふ
朝餉を食べ終わり、現代で言うところの午前10時くらいに元許嫁とかいう人が、お付の人をたくさん引き連れてやってきた。
藤原菖蒲(ふじわらのあやめ)
歳は多分私と変わらないか、少し上くらいに見える。
晴れ着かよ、っていうくらいの、桃色の生地に金や銀の刺繍が施された煌びやかな着物。
財力が手に取るように分かる装飾品の宝石の数々。
既に敦政やその父兄に挨拶を済ませたということで、何故か私の部屋まで挨拶に来た。
「お初にお目にかかります、藤原菖蒲といいます。」
会釈程度に頭を下げた。
「平坂輝夜といいます。よろしくお願いします。」
自己紹介を済ませた後に流れる沈黙
(き、気まずい…ほんとに何しに来たの、このお方は…)
先に沈黙を破ったのは菖蒲のほうだった。
「わたくし、敦政様との復縁を望んでおりますの。貴方が最近敦政様とたいへん仲がよろしいとお聞き致しましたので、ご報告に参りましたわ。」
明らかな敵意。
扇子で口元を隠していて、表情は分かりにくいのだが、平安美人らしい細い目からは鋭いものを感じる。
(というか、この人“報告に来た”って言ったけど、もう決定事項ってこと!?さすがに来て10分くらいで「はい、復縁」とはならないでしょ…)
この人、苦手なタイプだ…