千年前の君を想ふ
というか、説明という説明を全部ぶっ飛ばしてるよね…
「あの、失礼ですが……貴方には他の男性がいらっしゃるのでは?」
昨日ふくから聞いた話からすれば、彼女は敦政ではない他の誰かと既に結婚しているはず。
「ああ、夫のことですの?
…捨てましたわ」
ゾクッ
綺麗に微笑んでいるのだが、目が笑っていない。
(これは…相当な毒婦だ…)
「輝夜様、と言いましたかしら?貴方が敦政様と結婚しても、中御門家に何の利益がありますの?」
ドクン、と胸が大きく鳴った。
「わたくしの家柄なら、十分に利益になりますし……家柄だけでなく、わたくし自身も敦政様を悦ばせることができますわ。」
本当に、蛇に睨まれたカエルとはこのことかと思う。
たくさん言いたいことはあるのに、口から出てこない。
家柄のことを出されては、何も言えない。
家柄云々以前に、どこから来たのかも分からない小娘が、藤原家(多分あの有名な)のお姫様に勝てるわけがないのだ。
私がぎゅっと唇を噛み締めたとき、あの優しい匂いが鼻を掠めた。