千年前の君を想ふ
ーーーーー30分程前ーーーーー
「お久しぶりでございます、義敦様(父君)、義政様(兄上様)、敦政様。」
御簾越しに向かい合って話しているので、表情は読めない。
「息災だったようじゃの。」
義敦がふぉっふおっふおっと笑う。
「義政様は、ご婚約おめでとうございます。結納も近いとか…」
「あぁ。天下一愛しい妻を迎えられるよ。」
「ふふふっ…惚気られてしまいましたわ。」
「前置きは十分であろう。さっさと本題に入れ。」
「あら……やはり敦政様にはお見通しですのね。」
「わたくしの夫の渡邊家が、帝のご機嫌を損ねたとかで……位が下がってしまいましたの。
という訳で、愛想を尽かして離縁して来ましたの。」
「それで、私ともう一度婚約をしようと申すか……!」
「あらぁ!話がお早いですわ!」
敦政は、グッと拳に力を入れる。
「残念ながら、私にも結納の予定があるのでな。復縁は無理だ。」
「あら……そうなのですか。残念ですわ。」
残念、と言いながらもクスクスと声が聞こえる。
「その婚約者の方に、一度お会いしてみたいですわ。」
「断る。あまりにも愛しいので、あまり人目には付けさせたくないのだ。」
「そうして、縛り付けるのですね…私みたいに。」
敦政は何も言えない。
悪い予感しかしないのに、輝夜を守ってやれない。
それからまた少しだけ世間話をして、菖蒲は部屋から出ていった。
ーーーーーそして今に至る。