千年前の君を想ふ
突然すっと菖蒲が立ち上がり、私達の方へ歩いて来た。
(え、何!?怖い怖い……)
敦政の前に置いてある徳利(とっくり)を持ち、
「お注ぎ致しますわ、敦政様。」
と、花がほころぶような笑みを浮かべた。
ーーまるで私は見えていないかのように、見事に敦政だけを見て話している。
(女の争いは、末恐ろしい…!!)
どう切り返すのか、心配になって敦政を見ると、
「輝夜、酒を口に含め。」
「え?…は、はい。」
何をする気なのか、全く見当もつかないまま自分の猪口(ちょこ)に口をつけ、酒を口に含んだ……
それを見計らい、敦政は私に唇を重ねた。
(…えぇ!?)
口の中にあった酒を、敦政は器用に飲み干した。
時に舌を絡め、一滴残らず掠めとっていった。
「んん……んぅ……」
息をつく暇もないので、つい声が漏れてしまう。