千年前の君を想ふ


視界の端にちらっと映った菖蒲は、驚愕と、羞恥と、嫉妬からの怒りなどでぐちゃぐちゃの表情を浮かべていた。






(こ、怖い怖い怖い…!!)





私が恥ずかしさと恐怖で打ち震えているうちに、敦政は菖蒲に向かってケンカを売るように切り返した。



「残念だが菖蒲殿、私に酒を与えてくれる女性は輝夜だけで良いのだ。どうか、父上や兄上の方へ当たってくれ。」






「そうですか…残念ですわぁ…!」




あらら、もう泣きそう。





「すみません、少し気分が悪うございます。折角の宴の席でございますが、私はお暇させていただきます…」




そう言って菖蒲は、誰の返事も待たずに立ち上がり、部屋から出ていってしまった。












菖蒲が出ていくのに従って、ぞろぞろとお付の者達も部屋から出ていったので、人口密度が一気に低くなった。





しかし、興ざめのような雰囲気にはならず、全員がホッとしたような空気になった。

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