千年前の君を想ふ
満月の日に
その約1ヶ月後、義政さんと婚約者さんの結婚の儀式が行われた。
といっても、遠い所に住んでいる人なので、滅多に会うことが出来ないらしく、昨晩彼女に会いに行ったのが3回目だったそうだ。(少ない!)
その時に餅を食べたことで、家の一員になったそうだ。
(確か、結婚の原型だったよね…?三日餅(みかのもちひ)とかいうやつ)
義政さんが一旦実家へ帰ってくるので、道中の安全祈願ということで、私がタイムスリップしてきた池がある神社に、敦政と2人で来ている。
祈祷は思ったよりも長い時間行われ、終わった頃には、宵の明星が瞬いていた。
敦政と並んで、ゆっくり歩く。
「あの池から、ここへ来たの。」
敦政の着物の裾を少し引いて、行ってみよう、と促す。
「やはり不思議な事だ。何故時を超えてやってくることが出来たのか…。」
敦政がつぶやいた。
「私も、ここへ来た理由も、帰り方も、何も分からない。
……でも、とても感謝してるの。」
「感謝?」
意味が分かっていないのか、敦政は首を傾げる。
「だって、ここへ来なかったら、貴方に会えなかったでしょう?」
少し照れくさくて、へへっと笑うと、敦政はふいっと顔を背けた。
ーーー今までなら、怒ったのかな?とか思うだろうけど、今ならわかる。
彼の赤くなった横顔を見て、クスッと笑う。
「おい、今笑ったな?」
「いや、笑ってない……ふふっ」
そんな幸せなやりとりをしていると、いつの間にか出ていた月が、更に強く光を放った。
思わず月を見上げると、とても大きな、惹き込まれそうな満月だった。
強い光が一瞬弱まった、と思ったら、光の束が一筋、池に向かって落ちてきた。
一筋の光が途切れたとき、池に映った景色に私は涙を流した。
平成の、実家の景色が映ったのだ。
そして、ちょうど今池の前に花束を置いて、祈りを捧げているような母の姿があった。