千年前の君を想ふ
「お母さん!!」
思わず叫ぶと、母はキョロキョロと辺りを見回したので、「ここ!池の中!!」と叫ぶ。
母と目が合った。
雨が降っているわけでもないのに、池に小さな波紋がいくつも浮かぶ。
『良かった……輝夜、生きてるのね?』
「うん。生きてるよ……!」
『本当に、良かった!毎日毎日、心配で…………今、何処にいるの?隣りの方はどなた?」
「私は今、平安時代にいるの。」
『はぁ!?平安時代?』
お母さんがこんなに取り乱しているのを初めて見た。
「そして、この人は、私の恋人の…」
「輝夜、私に挨拶させてくれ。」
敦政が制止したので1歩池から引くと、代わりに敦政が前に出た。
「私は中御門家次男、中御門敦政と申します。輝夜殿は、私の想い人であり、これからの生涯を共に過ごそうと考えております。」
(生涯を共にって……!そんなふうに考えてくれてたのか…)
「どうか、娘御を私に預けて頂けないでしょうか!」
『……輝夜。』
「はい。」
『この人のこと、本当に好きなの?』
「はい!」
恥ずかしかったが、自信をもって答えることができた。
ちらっと横を見ると、敦政が幸せそうに微笑んでいる。
つられて、私も微笑む。
『わかりました。敦政さん、どうか、輝夜をよろしくお願いします。輝夜、幸せになるのよ。』
「「はい!」」
『……なんとか母として、カッコよく〆たかったけど……輝夜、1つ言わせて頂戴。』
「は、はい。」
(何を言われるんだろう……「心配したのよ!?」みたいな感じかな……)