千年前の君を想ふ
帰りの牛車の中、ふと思い出したように敦政が私に尋ねた。
「そういえば、いけめん、とはどういった意味なのだ?」
「えっと……ひ、秘密!!」
「何をそんなに顔を赤くしておるのだ?何か恥ずかしい事なのか?」
「そういうことじゃないけどっ!」
「ふむ……褥でじっくりと聞きだすとするか。」
「な…に言ってるのよ、変態!」
「なんだと!?」
こんなふうに、いつまでも2人でじゃれ合って、愛し合って、時には喧嘩もして……
そんな人生が、彼の隣なら築ける。
根拠の無い自信がある。
不確定な未来でも、きっと幸せになれる。
その大きな手と広い腕で包んでもらえたなら。
この平安の世でも、2人で幸せに暮らしていけるはず。
平安の夜にも、平成と同じ月が、いつまでも輝いていた。