千年前の君を想ふ
さすがに下着を生徒さん達に晒す訳にはいかないので、白い肌襦袢(はだじゅばん)の格好になり、母の前に立つ。
母は着物の説明を一枚一枚していくが、私は「これから子泣き爺みたいにどんどん重くなるんだな…」と遠い目をして話は聞かない。
生徒さんの中には、ふむふむ、と聞いているだけの人もいれば、メモを取りながら真剣に聞いてる人もいる。
(おなかすいたな…今日の夕飯は何だろう…)
そう思ったタイミングで着付けが終了したみたいで…
「はい、完成でございます!12枚も着てるから、重いでしょう?」
「は、はい。重いです……」
フラフラになっている娘をよそに「では、お写真を撮られる方はどうぞ〜」と言い出す母。
すると、ある生徒さんが
「あの〜、庭の池で写真を撮っても良いでしょうか?」
(な、なにを言い出すんじゃこの人は〜!!)
私はやめてくれ、という目線を送ったつもりだったが母には届かず…
「あら、いいわねぇ。私も撮ろうかしら。」
とか言い出した。
…この人達は、十二単の重さを分かってないようだなぁ…