鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「さっきの話…」
さっきの話って、同棲の話…?
緊張のあまり、ごくりと唾を飲み込んでしまった。
「はい…」
もう掠れた声しか出てこない。
「ここしばらく会えなかっただろ。つき合ってからまだ日は浅いが、俺の中で菜緒の存在が日に日にでかくなっていくばかりだ」
私は黙ったままコクリと頷いた。
「仕事が終わってここに帰っても、菜緒がいないと疲れがとれないどころか、部屋中の空気が冷えきってる気がする」
「それは、私も、同じです」
家に帰って晩御飯を食べても味気がなかった。
仕事の邪魔になるんじゃないかと思って、自分からメールは送れないくせに、いつ孝太郎さんからメールがくるかとスマホを気にする日々だった。
メールがくると、今度は声が聞きたくなる。
それから顔を見たくなる。
抱き締めてほしくなる。
次々に欲求が膨らんでいって、私ってこんなふうだったっけと、思わずひとりで苦笑いしてしまったくらいだ。