鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「課長、ありがとうございます」
「みんなに配ってくれ」
「はい」
鬼課長なんて呼ばれてるけど、本当は気配りが出来てとても優しい。
さりげない優しさに触れると、ますます好きの度合いが高くなる。
でも今は仕事中。
気分転換しようと、給湯室で全員分のコーヒーを淹れていると、背後に人気を感じて振り返った。
扉にもたれるように立って、腕を組んでこちらを見ている。
そんな姿も課長だと色気が駄々漏れでドキドキしてしまう。
「菜緒」
不意に名前を呼ばれてギョッとしてしまった。
ここは社内。
誰に聞かれているかわからないし、いつ人が来ても不思議じゃない。
「か、課長。ここ社内ですよ」
思わず駆け寄って、背の高い課長を見上げて小声で話した。
「今は誰も来ないから大丈夫だ。それより同棲の話だが」
今は誰も来ないって、その根拠はどこから?
しかも、ここで同棲の話って、落ち着いて出来るワケがない。
「課長、ですから、ここ社内…」