鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
同棲となれば引っ越しすることになるから、親に報告しなくちゃいけないとは思っていたけど、いざとなると及び腰になってしまう。
「どうしても、ですか?」
「あぁ、絶対だ」
きっぱり言われてしまい、反論すら出来ない。
「わかりました」
課長の胸に顔を埋めて、掠れる声で答えた。
少しの間、ゆっくり頭を撫でられ心地よくなっていたけど、ここは社内。
課長は私から身体を離して軽く唇にキスを落とした。
「先に行く」
ひとり給湯室に残り、熱くなった頬を手で扇いで冷ました。
どうやら私に逃げ道はないようだ。
覚悟を決めて、真っ直ぐ突き進むだけ。
私の隣には課長がいる。
そう思えば、親への報告も勇気を出してみようと前向きに考えられた。
ただ1点だけ、不安要素は拭いきれていないけれど、それも避けては通れない道。
大きく深呼吸して、コーヒーが冷めないうちにフロアに戻って配ることにした。