鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「もしもし、お母さん?」
孝太郎さんに言われた通り、少し残業して帰宅した私は早速実家に連絡を入れた。
『あら、久しぶり。ひとり暮らしどう?体調は大丈夫?ちゃんと食べてる?』
矢継ぎ早にいろいろ尋ねられても困ってしまう。
「お母さん、落ち着いてよ。私は元気。仕事も順調」
『だって心配だもの』
そう言われてしまうと、返す言葉がない。
実家を離れてひとり暮らしをする娘を心配する親。
ごくごく当たり前の光景に見えるけど、真宮家はちょっと特殊かもしれない。
「お母さん、今月の出来れば週末で空いてる日ってある?」
スマホを持つ手が汗ばんできた。
『お母さんはいつも暇よ』
そう言って電話越しで大爆笑している。
「お父さんは?」
『そうねぇ、最終の週末は会社の忘年会って言ってたと思う。なにかあるの?』
「ええっと、うん、あのね…」
どうしても、それ以上言葉が出てこない。
緊張感が増して、どう言ったらいいのかわからなくなってしまった。