鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)


『もしかして、つき合ってる人を連れてくるとか?』

「えっ!なんでわかったの!?」

なかなか言えない私に業を煮やしたらしい。

『女の感よ』

「そ、そう」

『で、どんな人?いくつ?なにしてる人?イケメン?』

またしても、矢継ぎ早にいろいろ尋ねてくる。

「えっと、30歳で私の上司で課長。それでね…」

なんとか質問に答えて、日にちをいつにしたらいいのか訊こうとしたら、電話越しでなにやら話し声が聞こえてきた。

「もしもし、お母さん?」

『ちょっと、今私がしゃべってるのよ』

「もしもし?」

一瞬間が空いて電話口に出たのはお父さんだった。

『菜緒か?今週末に連れてきなさい』

「えっ、お父さん?」

そう言うと、またお母さんに代わっていた。

『じゃあ、今週末楽しみにしてるわね』

私の返事を聞くこともなく、電話は切れてしまっていた。

ツーツーツーと、通話終了の無機質な音だけが耳に残る。

しばらくしてハッと我に返り、孝太郎さんにメールした。

すぐに『了解』と返信が届くと、溜まった疲れがどっと押し寄せてきて、瞼を閉じると深い眠りについた。


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