鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)


「孝太郎さん、急すぎてすみません」

孝太郎さんの運転する車で私の実家に向かう道中で、私は孝太郎さんに謝った。

ようやく仕事が落ち着いた週末、のんびり過ごす予定だったに違いないのに、孝太郎さんは嫌な顔ひとつせず、二つ返事で実家に行くことが決まった。

チラッと隣を見れば、スーツ姿の孝太郎さんが真っ直ぐ前を見て運転している。

あまりのかっこよさに惚れ惚れしてしまう。

「俺は一日でも早くご挨拶に伺いたかったから、ちょうど良かった」

「あの、私の家族、ちょっと心配性なところがあって。もっと早く言っておくべきでした」

「こんな可愛い娘がいたら、心配にもなるだろ」

「いや、あの、度合いが違うというか…」

「反対されても何度でも話をする」

「孝太郎さん…」

緊張感なんて微塵も感じさせないで、堂々とした姿にますます見惚れてしまう。

「次を曲がればいいのか?」

「あっ、はい。曲がれば家が見えてきます」

いつの間にか窓の外には幼い頃から見慣れた風景が流れている。




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