鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「あの、瑞樹さんというのは?」
孝太郎さんの言葉にハッと我に返った。
「私の兄です」
「お兄さん?」
「10歳上なんで、今34歳です」
「歳が離れてるせいか、兄っていうより父親みたいだな」
お父さんは呆れるように呟いた。
まさしく、あれは兄ではなく、父親じゃないかと思ってしまう。
「瑞樹は菜緒のことが可愛くて仕方ないのよ。菜緒のことが心配で中学から女子校に行くように言ったのも瑞樹だったわね。門限も作ったり、男女交際は禁止だとか、バイトすらさせなかったわよね」
お母さんは当時のことを思い出したのか、楽しそうに笑っている。
対照的に私は顔をしかめた。
話だけ聞けば、まるでお嬢様のような生活だけど、私の家はごくごく普通の一般家庭。
でも、私は中学からそんな生活をしてきたおかげで、お父さんとお兄ちゃん、学校の先生以外の男の人と接触したことがない。
男の人が苦手で怖く感じてしまうのも、そんな生活をしていたせいだと思っている。