鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
お父さんも心配性だけど、それ以上にお兄ちゃんは過保護すぎる。
世間ではシスコンと呼ばれる類いなんだと思う。
だから、つき合ってる人がいるとか、一緒に暮らしたいとか、結婚とか、そういった話をお兄ちゃんにするには勇気と覚悟が必要だった。
「お兄ちゃん、なにか言ってた?」
「なんにも言わないのよ。ただ黙って聞いてて、話し終えたら切っちゃったのよ」
怖すぎる。
黙って聞いて、なにも言わず電話を切った?
あのお兄ちゃんのことだから、絶対反対に違いない。
どうしよう。
このままお兄ちゃんのことは放っておく?
触らぬ神に祟りなし的な?
ぐるぐると頭の中であれこれ考えていると、玄関の扉が荒っぽく開けられ、ドタドタと足音が近づいてくる。
「菜緒!居るのか!?」
「えっ!?お兄ちゃん!?」
声の主は間違いなくお兄ちゃん。
でも、お兄ちゃんは確か…。
「瑞樹!?どうしたんだ?」
「あら、お帰り」
お父さんもお母さんも目をぱちくりさせている。
隣に座る孝太郎さんをチラッと見ると、さすがに目を見開いてお兄ちゃんを見上げるように見ている。