鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「どうしてお兄ちゃんがここに!?」
「菜緒の一大事なんだから、帰って来た」
帰って来たって簡単に言ってるけど、そんなバカな。
「お兄ちゃん、仕事は?」
「教授に言って3日だけ休みをもらった。まぁ、ここんところ休みなく働いてたから、これくらいワケない。それより、菜緒の相手って…」
お兄ちゃんは孝太郎さんを睨みつけるように凝視している。
「堂林孝太郎と申します」
孝太郎さんは礼儀正しく立ち上がって深く頭を下げている。
お兄ちゃんも背が高く、二人が対峙すると威圧感が半端ない。
「菜緒の兄の瑞樹です」
お兄ちゃんは手短に挨拶して、ソファーにドカッと座った。
「あの、兄はアメリカの病院で働いてまして…。お兄ちゃん、わざわざ日本に帰って来たの?」
「論文の準備もあるから今夜の便で戻るけどな」
まさしくとんぼ返りとはこういうことを言うんだろう。
「ドクターですか?」
孝太郎さんは単刀直入に訊いている。
「外科医。今はアメリカのS病院で働いてる」
S病院は大きな病院で、日本人ドクターを何人も受け入れているらしい。
お兄ちゃんも勉強を兼ねて1年前から働いてる。