鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「瑞樹、お前が尊敬する先輩の弟さんが菜緒の相手なんだから、賛成してやっていいんじゃないか?」
お父さんの一言に、みんな黙り込んでシーンと静まり返った。
「いや、まぁ、堂林先生はすごいドクターだしな。いや、でも、いいのか?」
「菜緒さんのことは、一生大切にします。ですから、私に預けてくださいませんか?」
孝太郎さんの真剣な言葉に、つい涙腺が緩んでしまう。
「菜緒はこの人といて平気か?」
私が男の人が苦手で怖いと思ってしまうことをお兄ちゃんはよく知っているから、それが心配なんだろう。
「平気。孝太郎さんと一緒にいると心地いいし安心する」
迷わず孝太郎さんへの想いが口から出ていく。
「そうか。必ず菜緒を幸せにしてやってください。よろしくお願いします」
お兄ちゃんの言葉に、私の涙腺は崩壊してしまった。
ズビズビと鼻をすする私の背中を孝太郎さんはゆっくり擦ってくれる。
緊張感から解放されて、幸せな気持ちで満たされていく。
そんな私を見てお兄ちゃんには「泣いたり笑ったり忙しいヤツ」と冷たい表情で言われてしまい、孝太郎さんには「コドモみたいだな」と笑われてしまった。
もしかしたらふたりは同じタイプなのかも?
そんなことを思いながら、あっという間に時間は過ぎていった。