鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「真宮さん?」
名前を呼ばれてハッと我に返った。
「あ、すみません。課長が結婚、ですか?」
「私は受付の子に聞いたんだけど」
「私は総務の同期に聞いたわよ」
ワイワイ騒ぎだして、徐々に声も大きくなってきた。
「だから!堂林課長が結婚するって噂になってるの!」
「しかも相手は常務の娘さんでしょ!」
頭の中が真っ白になってしまった。
目の前の光景がどこか遠く感じられる。
夢なのか現実なのか、なにがなんだかわからなくなってしまった。
課長が結婚?
相手は常務の娘さん?
なにそれ?
「菜緒ちゃん!菜緒ちゃん!」
佐野さんに肩を揺さぶられて、ようやく我に返った。
「真宮さん、なにか聞いてる?」
「もしかして1課の人だったら知ってるかと思って」
私はなにも知らない。
だって、年明けには引っ越しして、課長と一緒に暮らすことになっている。
お互いの両親にも挨拶済み。
将来的なことも考えて、一緒に暮らすっていう約束だった。
「すみません。私はなにも知りません」