鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
そう言うだけで精一杯だった。
「私もそんな話知らないわよ。課長に聞けばはっきりするわよ」
佐野さんは噂に振り回されないようにと女性社員たちに諭している。
「もう社内中に流れてますよ」
「1課の人が知らないってことはデマなのかな?」
「課長、モテるしね」
「相手が常務の娘さんってとこがすごいよね」
「逆玉の輿?」
収拾がつかないくらいにキャーキャー大騒ぎしている。
「佐野さん、私、お昼行ってきます」
「菜緒ちゃん…」
心配してくれる佐野さんを見ると、なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。
私は財布を掴んで逃げるように社員食堂に向かった。
「菜緒!」
「あ、園子」
社員食堂の入口で園子と合流した。
「変な噂なんて、気にしないのよ」
いつになく真剣な表情の園子に顔を覗かれて、苦笑いするしかなかった。
「開発部でも噂になってるんだね」
「堂林課長は外回り?」
「うん。年末の挨拶回り」
「当の本人がいないから、ますます噂が広がるのよ」