鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「真宮さん、顔色悪いけど大丈夫?」
「大丈夫ですよ!コーヒー淹れてきますね!」
午後の営業部のフロアには、課長以外の全員が揃っていて賑わっている。
課長の結婚について誰も口に出さないことは、今の私にとって有り難かった。
受発注の処理も終わり、ファイリング作業をしていた時、営業部のフロアに専務が現れた。
営業1課の加治田くんのお父さんでもある専務は、わざわざ年末の挨拶で各部署を回っていた。
「専務!わざわざお越しいただかなくとも、こちらから参りましたのに」
営業2課と3課の課長がペコペコとお辞儀している。
その場にいた全員が立ち上がって専務に視線を向けた。
「1年お疲れ様でした。来年もよろしくお願いします。急にお邪魔してすみません。どうぞ、仕事に戻ってください」
やり手だという専務だけれど、柔らかい雰囲気で威圧感を見せることなく、下っ端の私たちにも丁寧な口調で話してくれる。
専務は営業1課のほうにやって来て、加治田くんを呼んだ。
「堂林課長は?」
「年末の挨拶回り、です」
加治田くんは微妙な敬語を使っている。
佐野さんと顔を見合わせて笑ってしまった。