鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「そうか。せっかくだから挨拶したかったんだけどな。仕方ないか」
「専務、そろそろ…」
専務の秘書が次を促している。
踵を返した専務は、ふと立ち止まって振り返った。
「あ、そういえば堂林課長が結婚だとかって噂流れてるみたいだね」
その言葉に全員の動きが止まって「えっ!?」と驚きの声があがった。
「ちょっと!!その話は…」
加治田くんは慌てて専務の背中を押して、フロアから出そうとしている。
多分私のことを気遣ってくれているに違いない。
「おい。なにするんだよ」
「だから、その話は…」
全員が専務と加治田くんに視線を向けている。
「相手が常務の娘さんだって?噂聞いた時は笑ってしまったよ」
「えっ!?」
笑ってしまったって?
一体どういうことだろう?
「だって、常務に娘さんはいないからね」
一瞬間が空いて、「はぁー!?」と加治田くんが叫んだ。
私は持っていたファイルを落としてしまった。
散らばった書類を集める気力もない。