鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「一生に一度しかない結婚式なので、菜緒を驚かせたく、こうしてサプライズすることにしました。こうして皆様の前で手紙を読むこともないと思い、菜緒に手紙を書きました」
そう言うと、孝太郎さんは胸ポケットから手紙を取り出した。
「孝太郎さん?」
孝太郎さんは一瞬私の顔を見て、直ぐに手紙に視線を戻した。
「菜緒を初めて見た時、俺は菜緒に一目惚れした。だが、俺は上司、菜緒は部下。一度は気持ちに蓋をしたつもりだったが、そんな俺の背中を佐野さんと冴木が押してくれた。まぁ、ふたりの策略にまんまと嵌められたと言っても過言ではないと思うが」
その言葉に会場中に笑いが起きた。
佐野さんと冴木主任はお腹を抱えて笑っている。
「俺は仕事に厳しいし、菜緒も会社での俺の姿をよく知っていると思う」
冴木主任が素早く反応して、「よっ!鬼課長!」と囃し立てて会社の人たちの笑いを誘った。
孝太郎さんは冴木主任を睨んで、また手紙に視線を戻した。