鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
端から見たら、お酒の席で肩を触られたくらいでって思うのかもしれない。
でも、恋愛経験が少なくて、男の人と付き合ったことがない私にとっては、とても怖いことだった。
二十歳を越えたのだから、社会人なのだから、と頭の中ではわかっているつもりでも、免疫のない私は飲み会を心から楽しんだことはない。
「すみません。そんなことくらいでって思いますよね…」
チラッと課長を見ると、険しい表情だった。
しかも、ため息までつかれる始末。
やっぱり話さなければ良かったのかも。
「すみません。こんな話を聞かされても困りますよね…」
面倒な部下だと思われたかな?
嫌われてしまったかな?
課長に嫌われたくないのに…。
「真宮」
「はい」
私は俯いたまま、返事をした。
「真宮、こっちを向け」
そう言われても、課長の目を見る勇気はない。
呆れられたに違いない。
私は首を左右に振った。
ふと、私の隣に誰かが座ったのを感じた。
頭をポンポンと撫でられて、驚いて隣を見上げると、課長と目が合った。
「真宮、俺に触られて気持ち悪いか?」
「いえ、大丈夫です」
加治田くんには肩を触られただけで恐怖を感じた。
でも、課長に頭を撫でられても、隣に座られても、気持ち悪いとは思わない。
日中に、涙が溜まった瞼を触られた時も、気持ちが悪いとは思わなかった。
むしろホッとしている私って、変なのかな?