鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
その後、課長はスマートに会計を済ませて、自然に手を繋がれてお店を出た。
一応ここは会社の近くで、まだ時刻は午後8時過ぎだったから、誰かに見られる可能性だってあると思うんだけど、と気にしてるのは私だけみたいで、課長は平静で堂々としていた。
大通りに出ると、課長はタクシーを捕まえて、私を後部座席に押し込んだ。
まだ電車だってあるのに、と言っても心配だからと聞き入れられず。
タクシーの運転手さんに「これで」と一万円札を渡して後部座席のドアを閉めたので、私は慌てて窓を開けた。
「課長!あの、今日はごちそうさまでした。それと、これもありがとうございます」
課長に付けてもらったネックレスを手で触った。
「それにタクシー代まで…。私、課長になにも…」
こんな高価ものをプレゼントしてくれて。
ご飯代もタクシー代も出してもらって申し訳ない気持ちで課長を見る。
「俺はやっと手に入れた」
課長は私を指差して、運転手さんに「出してください」と言って一歩下がった。
か、課長~!
私、高熱で倒れそうです!
去り際にそんなこと言うなんて、どうしたらいいんですか!?
タクシーの運転手さんには「なんか、すごいね」なんて気まずそうに言われ、私は赤面した顔を俯けたまま、「はい…」と消え入るような声で返事をした。
居たたまれない…。
早く家に帰りたい…。
家に着くまで、私は一度も顔を上げられなかった。