鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
~~~堂林孝太郎side~~~
◆◇堂林孝太郎side◇◆
一台のタクシーを見送って、空を見上げた。
時刻は午後8時過ぎ。
大通りに建ち並ぶ高層オフィスビルの窓には、まだあちこち明かりが灯っている。
さて、会社に戻るか。
足取り軽く歩いていると、ちょうど正面玄関で部下の森本と横山に出会した。
「あれっ?課長!今日は早く帰ったんじゃ?」
「あぁ、海外の取引先と会議が入ってるから戻ってきたんだ」
「珍しく定時過ぎに帰られたから、みんな何事だろうかって話してましたよ」
だろうな。
定時で帰ったことなんて、入社して数えるほどしかない。
「冴木はまだ残ってるか?」
「はい」
「そうか。お疲れ」
「お疲れ様でした!」
部下を見送り、足早に営業部のフロアに向かうと、まだ明かりが煌々と灯っていた。
どうやら営業2課も3課もまだ何人か残業しているようだ。
営業1課の主任デスクに目をやると、部下の冴木が猛烈なスピードでキーボードをカタカタと叩いていた。
「冴木!」
「うへっ」
うへっってなんだよ。
全く、コイツのせいで…、いや、コイツだけじゃないが。
「おいっ!どういうことか説明しろっ!」
仁王立ちでギロッと睨みをきかせている俺を見て、営業部のフロアがシーンと静まり返ったのは言うまでもない。