鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)


「大丈夫か?」

耳元で優しく囁かれる。

今日はいろいろなことがありすぎて、キャパオーバー気味だった。

加治田くんのこと。

園子のこと。

それから課長のこと。

課長は全てお見通しと言わんばかりに、ギュッと強く抱きしめてくれる。

課長以外の男の人にもしこんなことをされたら、卒倒してしまうかもしれない。

それくらいに男の人が苦手だし怖い。

けれど、今はなんだかとても安心するし、幸せな気持ちになる。

不思議とごく自然に、課長の背中に手を回し、スーツをギュッと掴んだ。

課長は更に強く抱きしめてくれる。

私の中でなにかがプツリと切れてしまったかのごとく、止めどなく涙が流れ落ちた。

私の涙に気づいた課長は、驚いた表情で私の顔を覗き込んだ。

「悪い。怖かったか?」

違う!

課長のことが怖くて泣いてるワケじゃない。

首を左右に振って、必死に否定した。

「違います!課長のことは怖くありません!ただ、課長に抱きしめられると安心して…」

今の正直な気持ちを伝えたかった。
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