鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
えっ、えっ、えっ!?
着て帰るって、これ一式!?
他の服は持って帰る!?
頭の中でフルスピードで暗算してみる。
イヤイヤイヤ、とんでもない金額ですけど!?
「孝太郎さん!?」
会計に向かおうとしていた孝太郎さんの手を引っ張って引き留めた。
「どうした?」
「あの、私、持ち合わせが…」
小声で訴える。
持ち合わせどころか、全部買ったら破産してしまう。
孝太郎さんはアタフタしている私を見下ろして、耳元で甘く囁いた。
「なに言ってるんだ?俺が買う。菜緒はここで待ってろ」
颯爽と会計に向かった孝太郎さんの背中を見つめながら、私はその場から動けなくなってしまった。
絶対わざとだ。
わざと耳元で囁いたんだ。
私が抵抗しないように。
孝太郎さん、恐るべし。
その後、会計を待っている間に店員さんに軽くメイクと髪型を施され、大量の紙袋を後部座席に積んで、車は出発した。