鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「そんなに見られると運転しにくいんだが」
「すみません…」
しまった。
運転する孝太郎さんをチラチラ盗み見ていたのがバレてしまっていた。
そういえば、まだ洋服のお礼を言っていなかったことに気づいた。
「あの、洋服ありがとうございました。こんなにたくさん買っていただいて…」
「不服か?」
「えっ?」
一体なんのことだろう?
思わず首を傾げた。
「俺、浮かれてる」
「浮かれてる?」
孝太郎さんが浮かれてる?
似つかわしくない単語に驚いて孝太郎さんを凝視した。
「好きな女との初デートだ。浮かれるだろ」
「えっ?」
「ずっと好きだった菜緒が、手を伸ばせばいつでも触れられる距離にいる。菜緒にはなんでもしてやりたいって思う。俺の勝手なワガママだ。迷惑か?」
前を向いて運転しながら、真剣な表情で真剣な言葉に胸が熱くなってくる。
「迷惑だなんて、とんでもないです。そんなふうに想ってもらえて、本当に嬉しいです」
鼻の奥がツンとして、瞼に涙が浮かんだ。