鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
孝太郎さんは私をチラッと見た。
「お前な、そんな顔するな」
ため息をつかれ、一気に不安になってしまった。
「すみません…」
さっきまで嬉しい気持ちでいっぱいだったのに、テンションはがた落ちで俯いた。
「全く、これだから無自覚は…。そんな顔見せられたら抱きたくなる」
「へっ!?」
だ、だ、抱きたくなる!?
どういうこと!?
一体、私はどんな顔をしていたんだろう?
ちょうど信号が赤になったらしく、孝太郎さんは私を見てニヤリと笑っている。
「悪い。少し意地悪だったな。待つって言ったしな」
「孝太郎さん…」
どこまでも甘く、どこまでも優しい。
「この歳だし、これまで何人かとつき合ったが、一生大事にしたいと思ったのは菜緒だけだ。告白したのも、プレゼントを贈ったのも、服を買ったのも、菜緒だけだ。浮かれてるって言ったろ?」
24歳で恋愛初心者の私とは違って、30歳でイケメンエリートな孝太郎さんが、過去につき合った人がいたことくらい想像はしていた。