鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
「真宮になにかあると、業務に支障がでる」
課長は立ち上がって、「佐野さん」と呼んだ。
私も立ち上がって後ろを振り返ると、いつの間に出勤したのか、ニコニコ笑顔の佐野さんがいた。
「午前中、真宮のフォローお願いします」
そう言って、課長は自分のデスクに戻っていく。
どうやら眼科に行くことは決定事項らしい。
ていうか、課長。
佐野さんになんの説明もなしですか?
「佐野さん、すみません。朝から目の調子が悪くて、眼科に行ってきます。すぐに戻ってきますから…」
仕事終わりに行こうと思っていたのに、これから行くことになるなんて、佐野さんに申し訳なさすぎる。
「こっちのことは気にしないで。ゆっくり行っておいで。菜緒ちゃんになにかあると困るから」
「さっき課長にも言われました。業務に支障がでるって。確かに一日休んだだけでも書類溜まりますよね」
以前、体調を崩して一日休んだことがあったけど、次の日、デスクの上は未処理の書類が山積みになってたっけ。
「業務に支障がでるっていうか、課長に支障がでるって感じだと思うな~」
「課長に、ですか?あぁ!そっか!監督不行き届きってことですね?気をつけないと!」
「そうじゃなくて…」
佐野さんはなにかブツブツと呟いていたけど、私の耳には聞こえてこなかった。