鬼課長と鈍感女子の攻防戦(番外編追加)
ぼーっとする思考回路をなんとか手繰り寄せて、意識が飛ばないように必死にしがみついた。
「孝太郎さん?」
「なんだ?」
唇は離れたけど、おでことおでこを密着させて、お互いに視線を合わせる。
恥ずかしい…。
ものすごく恥ずかしい…。
至近距離に孝太郎さんの端正な顔があるのにも。
それから、昼間お腹の虫に邪魔されて伝えられなかった覚悟を、本人に告げることに対しても。
軽く深呼吸して、勇気を振り絞って口を開いた。
「私…初めてだから、どうしたらいいかわかりません。でも、孝太郎さんに触れられるのは怖くないし、その、むしろもっと触れてほしいって…思ってます」
「……」
あれっ?
時が止まってる?
そんなワケはないか。
止まってるのは…孝太郎さん?
私の目を見たまま、無言で微動だにしない。
おでこをコツンとぶつけてみた。
「…自分がなにを言ってるのかわかってるのか?」
「はい」
「…無理してないか?」
「してません」